ゲーム制作において、BGMは世界観の「体温」を決める重要な要素です。しかし、私は音楽の専門教育を受けたこともなければ、楽器を嗜んでいるわけでもありません。
「ファンタジーとメカが混ざったような、神秘的だけど不穏な音が欲しい……」
そんな頭の中の抽象的なイメージを形にする術を持たなかった私が、今では『Regalia Logica』の全楽曲を自前で用意しています。それを可能にしてくれたのが、最新のAI技術でした。
「翻訳家」としてのGemini、「演奏家」としてのACE-Step
私の作曲プロセスは、メロディを書き留めることではなく、「対話」から始まります。
まず、AI(Gemini)に私の「妄想」をぶつけます。「森の中で精霊とちょっとした小競り合いをしているんだけど、神秘的で、でもダンサブルすぎない、コミカルな感じにしたい。どんな楽器がいいかな?」
するとGeminiは、まるで熟練の音楽プロデューサーのように提案してくれます。「それならファゴットでおどけた感じを出しましょう」「リズムはウッドブロックで刻むと森らしいですよ」。
こうして練り上げられた専門的なプロンプトを、今度は音楽生成モデル「ACE-Step v1.5」に渡します。すると、数分後には私のイメージを具現化した「まさにそれっぽい音」が流れ出すのです。
💡 実際のAIへのプロンプト例
ポイント:Deep cello pulse(チェロの低い拍動)を入れることで、地面の下で何かが目覚めるような鼓動を表現しています。
「軽量化」の工夫
本作はWebでのプレイも想定しているため、BGMのファイルサイズには非常に気を使っています。AIが生成してくれたリッチな音源を、いかに「音質を保ちつつ軽くするか」も、私の大切な仕事です。
- サンプリング周波数の調整: 不要な帯域をカット。
- モノラルとステレオの使い分け: 最適化。
- OGG形式への圧縮: 通信環境に配慮。
AIが教えてくれた「プロの凄み」への敬意
AIで「それっぽい音」が作れるようになればなるほど、逆に痛感することがあります。それは、プロの作曲家や音響エンジニアの方々の圧倒的な凄さです。
AIは「雰囲気」を出すのは得意ですが、物語のここぞという瞬間に完璧にシンクロする感情の揺れや、秒単位で計算された音の「間」は、やはり人間にしか描けない領域だと感じます。
生成された音をAudacityで加工し、ループの繋ぎ目をミリ単位で調整する泥臭い作業を繰り返すたびに、「プロはこれを、もっと高い次元でやっているんだ」と、音楽への尊敬の念が深まるばかりです。
表現の壁を越えて
私はプロの作曲家ではありません。でも、AIというパートナーがいるおかげで、「音楽が作れないから」という理由で物語のクオリティを妥協せずに済みました。
『Regalia Logica』のBGMには、そんな「AIへの驚き」と「本物の音楽への敬意」が詰まっています。ぜひ、ゲーム内でその空気感を楽しんでみてください!